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ホームニュース【SEED TIME】感染症に罹患したら? ~医師自身と患者さんの生活を守るために~

2025.12.25 カンファレンス

【SEED TIME】感染症に罹患したら? ~医師自身と患者さんの生活を守るために~

今日の内容

SEEDTIME第235回は、中島先生による「感染症に罹患したら? ~医師自身と患者さんの生活を守るために~」の発表でした。

私たちは日々、感染症の診断や治療に全力を注いでいますが、その背後にある「法律」や「生活保障」については、意外と詳しく知らないことも多いのではないでしょうか?今回のレクチャーは、医師自身が感染した場合の生活を守る術、そして患者さんの生活を守るための「生活処方箋」について、実践的な知識を学ぶ貴重な機会となりました。

感染症法と就業制限の基本

まず押さえておきたいのが、感染症法上の分類と就業制限の関係です。一類・二類感染症(結核やSARSなど)は法律に基づく「就業制限」がかかりますが、インフルエンザやCOVID-19などの五類感染症には法的な就業制限はありません。五類の場合は院内規定による「就業自粛」となる点が大きな違いです。この「法的制限」か「自主療養」かの違いが、利用できる補償制度の選択にも関わってきます。

「労災」か「私傷病」か?賢い制度選択

自身が感染した場合、重要なのは「業務起因性」の判断です。業務中に感染した可能性が高い場合は、迷わず「労災保険」を検討すべきです。労災であれば治療費は全額補償され、休業補償も給与の約80%(非課税)と手厚くなります。「医師は労災が認められにくい」というのは誤解であり、感染機会が明らかな場合は積極的に申請することが推奨されます。一方、業務外であれば有給休暇や傷病手当金(給与の約2/3)を活用することになります。

患者さんへの「生活処方箋」と公衆衛生

家庭医の役割は診断・治療だけではありません。仕事を休む患者さんの経済的不安に対し、「傷病手当金」や「労災」の可能性を伝えることも重要なケアです。また、保健所発行の通知書が診断書の代わりになる場合があることなど、患者さんの負担を減らす情報提供も大切です。そして、迅速な発生届の提出は、地域全体の公衆衛生を守る第一歩となります。

今日のコメント

今日のディスカッションポイントは、「これまでご自身や患者さんの感染症罹患で、申請やサポートをした経験」についてでした。

労災申請への心理的ハードル:「迷惑をかけるから」と申請を躊躇してしまうケースがありますが、権利として正しく行使することの重要性が再確認されました。

診断書の代替活用:保健所からの就業制限通知書等を活用することで、患者さんの文書料負担を減らせるという点は、明日からの診療ですぐに使える知見でした。

他職種との連携:自身の申請時も患者さんの相談時も、事務部門やICT(感染制御部)と密に連携し、一人で抱え込まないことが大切だと共有されました。

Take home message

家庭医として、自分、周り、地域を守りましょう!

  1. 自分の身を守る:感染も「業務災害」になり得ます。相談の上ですが、労災申請を選択肢に入れましょう。

  2. 患者さんの生活を守る:休業中の経済的不安に対する情報提供も、家庭医の重要な役割です。

  3. 社会を守る:迅速な発生届の提出が、地域医療と公衆衛生を守る第一歩です。

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